どうも、おときちです!
前回の記事ではETFの基礎をおさらいし、
SPY, VTI, QQQの3銘柄がそれぞれどのインデックスに連動するのか解説してきました。
今回は、それぞれのETFを比較し、色々な数字を元に多角的にみていきましょう。
SPY, VTI, QQQそれぞれの比較
SPYは米国最古のETFで、
ETFの王様とも言われていますので、
SPYとVTI、SPYとQQQを比較してみましょう。
以下の画像をご覧ください。
まず、Expense Ratioの欄をご覧ください。
この項目は、文字通り経費率を表しています。
このファンドの運営にどれだけの
コストがかかっているかがわかります。
この値は純資産総額が多ければ多いほど低くなる傾向にあります。
その理由を説明します。
運用には、どんなに運用金額が多くても少なくても
一定にかかってくる経費が存在します。
例えば運用報告書、会計監査費用などです。
この経費は1000億円のファンドでも、
1億円のファンドでも、同じようにかかってきます。
そのため、大きな金額を運用している
ファンドの方が経費の割合は小さくなる傾向にあるのです。
計算方法は単純で、経費としてかかった額を
ファンドの総資産で割れば算出できます。
しかし、表を見てみてください。
AUM(運用資産)が大きいSPYの方が資産が少ないVTIよりも経費がかかっています。
この理由は、S&P500というインデックスの
使用料負担が高いからではないかと言われています。
そのため、運用会社によってはより
安い指数に乗り換える動きも出てきています。
しかし、SPYとQQQを比較すると、
SPYの方が圧倒的に経費率が低くなっているのがおわかりいただけるかと思います。
AUMもSPYの方が約2倍高くなっています。
本来であればこのような差が出るのが普通なのです。
見方を変えれば、SPYの経費率が高いのではなく、
VTIが経費を安く抑えることに成功している、という考え方もできるでしょう。
Expense Ratioが低い方が株主への還元率が高くなりますが、
この数値だけを見て低ければ低いほどいいと判断するのは危険です。
投資先を選ぶ際は様々な数値を総合的に判断しましょう。
次にStructureの欄をご覧ください。
SPYとQQQはUIT、VTIのみETFとなっています。
これはどういうことでしょうか。
実は、米国ETFには
Unit Investment Trust(UIT)
Open-end Fund
Grantor Trust
の3種類が存在しています。
これらはファンドの「投資法人」としての形式を指しています。
まずUIT形式から特徴を見ていきましょう。
UITは、保有証券を固定的な
ポートフォリオとして一定の期間保有し続けます。
その間、保有する有価証券の貸し出しや、
配当金の再投資はできません。
ファンドが投資先の企業から受領した配当金は、
四半期や1年ごとなど、一定の期間ごとに分配金として投資家に還元されます。
そのため、運用する額の大きい投資家の視点では、
保有している期間は資産の一部が再投資されない状態になりますので、
投資効率が低下するという見方もあります。
最初に登場した形式がUITのため、
古くから存在するSPYやQQQはこの形式となっています。
一方で、VTIはOpen-end Fund形式です。
Open-end Fund形式とは?
UITと比べて柔軟性が高いため、
現在ではこちらの形式の方が一般的になっています。
こちらはETFではない一般的な投資信託(ミューチュアルファンド)と同様の投資形式です。
Open-end Fund形式では期限の定めがないため
配当金の再投資も可能ですので、
UITの最大の問題点である配当金の運用効率の低下が発生しません。
再投資の他にも、先物取引きやオプション取引等の
デリバティブを利用することもできます。
UITの問題を解消し、コスト低減や運用効率が
改善されたファンド形式と言えます。
先物やオプション取引についても簡単に触れておきたいと思います。
これらはどちらもデリバティブ(金融派生商品)の一種です。
そもそもデリバティブとは、株式、債券、為替などの
金融商品のリスクを分散させたり、
逆に高い収益を狙ったりするための手法です。
その中に、「将来売買することを約束する取引(先物)」と
「将来売買する権利を売買する取引(オプション)」があります。
これらは非常に似た概念のため区別が難しいのですが、
実は全く異なる金融商品です。
軟式テニスと硬式テニスくらい違うと表現されることもあります。
先物取引は、「将来のある日に、あらかじめ決められた価格で『原資産』を売買することを約束する」取引です。
一方でオプション取引は、
「あらかじめ決められた期日に、あらかじめ決められた価格で、原資産を『売買する権利』を売買する」取引です。
1番は、原資産を売買するのか、原資産を買う権利を売買するのかの違いです。
Open-end Fund形式のファンドは、
これらの仕組みも利用して幅広く運用を行うことができるのです。
UITでは基本的に現金で保有し続けますので、
このような柔軟性が評価され現在ではOpen-end Fundが主流です。
最後のGrantor Trust形式は他2つとは性質が異なり、
米国の投資会社法で規定される法人ではなく、信託契約の一種です。
Grantor Trust形式とは?
ファンドの所有者は、保有する有価証券から発生する
配当金や株主としての議決権などを直接的に保持します。
また株式・債券以外などの有価証券以外も
ポートフォリオに組み込むことができるので、
金や銀、原油も扱うことができます。
そのため商品や通貨を対象とするETFによく用いられる形式です。
続いては、各ETFの投資先企業を見てみましょう。
以下の表をご覧ください。
3つのETFに含まれている企業のリストです。
上記を見て何かお気付きの点があるのではないでしょうか。
私が初めてこの表を見た時に思ったのは、
「どれも似たようなラインナップだ」ということでした。
共通で含まれている会社が数多く存在しているのです。
しかし、ウェイトが異なっているのが見て取れます。
それは、各ETFが連動しているインデックスが違うためです。
前回の記事でお話しした通り、
SPYは約500社、VTIは約4000社、QQQは約100社で構成されています。
そのため、1番数が少ないQQQでは同じ会社でも
1社当たりのウェイトが高くなっていますし、
1番数の多いVTIではウェイトは当然低くなります。
3つとも全く別のインデックスを元にしているにも関わらず、
共通してIT分野の会社が大変多くなっているのが見て取れます。
以前の記事で、IT関連企業はNYSEではなく
NASDAQに上場していることが多いとお話ししてきました。
3つともIT分野の割合が増えているということは、
それだけNASDAQ上場企業の力が増しているとも言えます。
NASDAQのインデックスファンドであるQQQはもちろんのこと、
他の2つは複数の市場から企業を剪定しているにも関わらずこのような傾向が出ているのは大変興味深いです。
まとめ
全体として、NYSEには老舗の安定企業、
NASDAQには勢いのあるIT企業が多く上場しているということを理解してから
各ETFの内訳を見てみると、新たな発見があり面白いです。
今回は定番の米国ETF3銘柄の比較をお届けしました。
ここには投資先企業を全て載せることはできませんでしたので、
興味のある方は調べてみてください。